組織成員の倫理性に関する実証的研究

keywords.jpg組織,従業員,倫理性,尺度開発,リーダーシップ 

坂田 桐子 

KIRIKO SAKATA

division.jpg総合科学研究科 総合科学専攻 行動科学講座

position.jpg教授

研究概要

研究の背景

 組織における不祥事が相次ぐ中,組織成員の倫理観及び倫理的行動を促進するための有効な方策を明らかにする必要がある。しかし,技術職など特定の職種の職業的倫理観を測定する尺度や組織成員に限定しない一般的な道徳観を測定する尺度はいくつか開発されているが,組織成員の倫理性を包括的に測定するための尺度は開発されていない。そこで本研究では,組織における違反行為や非倫理的行為を低減する方策を探るための端緒として,組織成員の倫理性を測定する尺度を開発することを目的とした。

研究内容

 関連する先行研究のレビューから,組織成員の倫理性を「道徳的価値を内在化しており,倫理綱領など規則について知っているだけでなく,倫理問題について自律的に思考し,倫理的に行動できること」と定義した。このような成員は,単に規則に従うだけでなく,倫理問題について独善的になることなく自律的に判断できると考えられる。このような組織成員の倫理性を測定するため,本研究では28項目で構成される尺度を作成し,信頼性と妥当性を検討すると共に,組織の制度や直属上司のリーダーシップなどが組織成員の倫理性にどのように関連するのかを検討した。ウェブ調査を実施し,組織の従業員314名(平均年齢39.9歳、女性が54.1%)から有効回答を得た。

成果

 組織成員の倫理性尺度を因子分析した結果,「倫理的価値の内在化」「倫理に対する関心の欠如」「倫理規則に関する基礎的知識」「倫理問題に対する自律的思考」「倫理的行動の実践」という5因子が得られた。各因子の内的整合性は高く,最も低いものでも使用に耐えうるレベルであった。
さらに,個人レベルの変数(モラルアイデンティティ),部署レベルの変数(直属上司のリーダーシップ,部署の協力的風土),及び組織レベルの変数(コンプライアンス教育など倫理性を保つための制度の充実度)と組織成員の倫理性尺度との関連を検討するため重回帰分析を実施した。その結果,「倫理的価値の内在化」や「倫理に対する関心の欠如」については,主にモラルアイデンティティなど個人レベルの変数と関連しており,部署レベルや組織レベルの変数との関連は弱いものであった。一方,「倫理規則に関する基礎的知識」「倫理問題に対する自律的思考」「倫理的行動の実践」は組織レベルの変数とも有意な関連を示しており,組織の制度の充実が組織成員の倫理に関する知識の習得,思考力,及び実践を促進することが示唆された。また,上司の倫理的リーダーシップは,特に「倫理規則に関する基礎的知識」及び「倫理的行動の実践」を向上させる働きをしていた。今後は組織成員の倫理性尺度のさらなる精緻化を行う。

実用化に向けて(想定業界・用途、課題、企業への期待など)

・この分野に関心のある企業等との共同研究・受託研究は可能である。
・本研究の適用・応用について共同研究を希望する。

お問い合わせ