生殖線キメラ作製能力を有する近交系マウス由来胚性幹(ES)細胞の効率的樹立

keywords.jpg生殖線キメラ,ES細胞,近交系マウス 

外丸 祐介 

YUSUKE SOTOMARU

division.jpg自然科学研究支援開発センター 生命科学実験部門(霞)

position.jpg教授

共同研究者 : 神田暁史(広島大学自然科学研究支援開発センター・研究員)

研究概要

研究の背景

マウスES細胞は、再生医療や細胞分化の研究を始めとして、遺伝子組換え動物作製にも有用なツールである。この一方、動物遺伝子組換えマウスは遺伝子機能の解析やヒト疾患モデル動物として生命科学分野の研究に大きく貢献しているが、実験データの精密な解析にはマウスの遺伝的背景の影響を無視することはできない。これを解決する為には、実験に頻用されるC57BL/6やBALB等の近交系マウスに由来するES細胞を用いた遺伝子組換えマウスの作製が望ましいが、近年まで有効なES細胞樹立手段が確立されていなかった。一般的には、近交系マウスへの戻し交配を8世代以上に渡り行うことで遺伝的背景の均一化を図る必要があり、2-3年程度の期間を要する為、研究進展の大きな障害となっている。

研究内容

C57BL/6やBALB/c系統マウスは129系統と異なり、キメラマウスやその生殖系列への寄与率が高いES細胞を樹立することが困難である。この原因は遺伝子背景の違いが考えられるが、詳細は明らかにされていない。我々は、マウスES細胞の分化シグナルを抑制することで未分化を維持した培養を可能にするのPD0325901とCHIR99021を用いて、C57BL/6とBALB/c系統マウス由来ES細胞株の樹立を試みた。また、それらの未分化マーカーの発現や、キメラ形成能、及び生殖系列への寄与率を調べた。

成果

2i無添加区及び添加区のES細胞樹立効率は、C57BL/6Jでは27.6%および58.1%、BALB/c Crでは7.1%及び41.4%であり、いずれの系統においても2iを添加した場合に樹立効率が有意に高かった。また、2i添加条件で樹立したこれらのES細胞は、Oct3/4、Nanogなどの未分化マーカーを安定して発現していた。さらに、寄与率が極めて高いキメラ形成能を有し、生殖腺キメラも高率に確認できた。以上の結果から、2iを培地に添加することで、C57BL/6JとBALB/c Cr系統マウスからでも、キメラマウスの生殖系列へ寄与することができるES細胞を容易に樹立できることが明らかになった。

実用化に向けて(想定業界・用途、課題、企業への期待など)

本研究の適用・応用について共同研究を希望するが、ES細胞の分与も可能である。

本研究の特徴・優位性

我々のプロトコルにより、C57BL/6、BALB/c、129系統等の近交系マウスからES細胞を高率に樹立することができる。また、それらはGermline-transmission能力持つ事を確認済みであり、特にC57BL/6由来ES細胞については実際に遺伝子組換えマウスの作製実績を有する。

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Establishment of ES cells from inbred strain mice by dual inhibition (2i). Kanda A, Sotomaru Y, Shiozawa S, Hiyama E. J Reprod Dev. 58(1): 77-83, 2012.

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