ブルガダ症候群の心室細動リスクの層別化におけるTime-domain T wave alternanceの有用性について

keywords.jpgブルガダ症候群,心室細動,T wave alternance 

中野 由紀子 

YUKIKO NAKANO

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研究概要

研究の背景

ブルガダ症候群における心室細動(VF)リスクの層別化は非常に重要であり、様々なパラメーターが報告されてきたが、一定の見解が得られていない。T wave alternance(TWA)は再分極を反映する指標で、虚血性心疾患や非虚血心筋症で突然死の予測に有用であることが報告されてきた。Time-domain T wave alternanceは従来のMicrovolt TWAと異なり、脈拍数を上げることなく、ホルター心電図を用いて、TWAを評価可能な手法である。ブルガダ症候群が副交感神経優位な時間帯にVFを起こしやすいことを考慮すると、Microvolt TWAよりも、Time-domain TWAの方がより鋭敏にブルガダ症候群のTWAを反映する可能性がある。今回我々は、ブルガダ症候群におけるVF発症とTime-domain TWAの関連について検討を行った。

研究内容

ブルガダ症候群45例(男性44例; 平均年齢 45 ± 15歳)について、心室細動発症と, 突然死の家族歴, 自然発症 type 1 心電図(ECG), 心室加算平均心電図での遅延電位(LP), 電気生理学的検査でのVF誘発の有無,とTime-domain TWA との関連について検討を行った。Time domain TWAは24時間ホルター心電図でmodified moving average (MMA) 法にて算出した。表1に患者背景を示す。

成果

図1にブルガダ症候群で典型的なTime domain TWA陽性例を示す。表ROC curveよりTWAのカットオフ値を60uVとすると(図2)、Time domain TWA は13 人で陽性であった。心室細動既往のある症例ではない症例に比較して、有意にTWA陽性例(82% vs. 13%, P < 0.001) と自然発症type 1心電図(92% vs. 38%, P = 0.007) が多かった。多変量解析では、TWA 陽性[odds 比(OR) 7.217, 95% confidence interval (CI) 2.503–35.504, P = 0.002] で自然発症type 1心電図(OR 5.530, 95% CI 1.651–34.337, P = 0.020) が密接に心室細動発症に関与していた(表2)。自然発症type 1心電図は感度は高かったが(92%), 特異度が低かった(63%)。TWA陽性は感度も特異度も良好であった。(感度82%、特異度88%)。Time domain TWA はブルガダ症候群におけるVFリスクの層別化に大変有用であると考えた。

実用化に向けて(想定業界・用途、課題、企業への期待など)

この分野に関心のある企業等との共同研究は可能である。将来的に、より簡便で良好な非侵襲的指標の開発、検診や人間ドックや日常診療への臨床応用を期待している。

本研究の特徴・優位性

Time domain TWA はRICHARD L VERRIER先生がGE社と共同開発された新しいTWAの手法である。ブルガダ症候群のVFリスクの層別化は従来のMicrovolt TWA法では難しいことが報告されている。今回の研究の結果、ブルガダ症候群でTime domain TWA がVF予測に重要であるという事実は世界初の報告である。これは自律神経とVF発症が関連しているブルガダ症候群で、この手法がこれまでの手法より有利であったためと考える。再分極異常か脱分極異常か結論の出ていない、ブルガダ症候群の病態を考える上でもVFリスク予測という意味でも非常に重要である。

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Uchimura-Makita Y, Nakano Y, Tokuyama T, Fujiwra M, Watanabe Y, Sairaku A, Kawazoe H, Matsumura H, Oda N, Ikenaga H, Kajihara K, Motoda C, Oda N, Verrier R, Kihara Y. Time-Domain T-Wave Alternans is Strongly Associated with a History of Ventricular Fibrillation in Patients with Brugada Syndrome. J Cardiovasc Electrophysiol,doi: 10.1111/jce.12441,2014.

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