小型魚類の呼吸波計測に基づく生物学的水質監視装置

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曽 智 

ZU SOH

division.jpg工学研究院

position.jpg助教

共同研究者 : 辻 敏夫,栗田 雄一,平野 旭

研究概要

研究の背景

近年増加傾向にある工場排水などによる基準を超えた環境汚染の危機をいち早く察知するために,魚をセンサとして用いる生物学的水質監視装置が注目されている.生物学的水質監視装置は,化学分析的な水質検査法に較べて水質を常時連続監視できるという利点があり,魚の行動,または魚の生命活動に由来する生体電気信号のいずれかを監視することで,原水中への有害物質の混入を検出している.これに対して,本研究では生体電気信号と行動の両方の情報を組み合わせて水質汚染を検出可能なカメラレスの生物学的水質監視装置を提案する.

研究内容

本研究では,魚の呼吸と同期したμVオーダーの微弱な生体電気信号(呼吸波)に着目し,電極を格子状に並べた計測水槽(図1)を用いて自由遊泳している魚(ゼブラフィッシュ)から呼吸波を計測・解析するシステムを提案する.提案システムでは,各電極から計測された信号に対して周波数解析を行うことで,魚の呼吸のリズムを推定する.また,魚を電気信号の発生源と見立てて,計測された信号の周波数スペクトルのピークから電気信号の強さの空間分布を計算し,電気信号が最もよく計測されている位置を魚がいる位置として推定する.このように提案システムを用いると,生体電気信号だけでなく,魚の遊泳速度や位置といった行動情報も計測可能である.

成果

魚の呼吸リズムと遊泳速度から水質の危険度という指標を定義し,提案システムを用いて汚染物質(エタノール)の混入が発見可能かどうか検証実験を行った.エタノールを10分おきに少しずつ計測水槽に投入し,呼吸のリズムと速度の変化を監視した.結果を図2に示す.図において,(a)は水槽中のエタノール濃度,(b)は魚の遊泳速度,(c)は呼吸の周波数,(d)は魚の呼吸周波数と遊泳速度から計算された水質の危険度を示している.図より,エタノール濃度の上昇にともなって,危険度も上昇していることが分かる.以上より,危険度という指標から水質汚染が検出できる可能性が示された.

実用化に向けて(想定業界・用途、課題、企業への期待など)

提案システムが検出可能な化学物質とその濃度を検証するとともに,システムの簡素化と簡便化を図る必要がある.

本研究の特徴・優位性

従来の生物学的水質監視装置は行動もしくは生体電気信号のいずれかのみを監視しており,どちらか一方だけに変化が現れた場合,汚染を検出することは困難であった.また,動画像解析によって魚の行動監視を行う場合,光環境を一定にする必要があるため,光刺激による魚のストレスが水質の誤判別を招いてしまう可能性がある.本研究では,生体電気信号から行動推定を行うことで,上記の2つの問題を解決した.

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【特許】
日本国特許出願 2013-051916
水質検査システムおよび魚類監視システム
発明者:辻 敏夫, 曽 智, 栗田 雄一,宮本 健太郎
特許出願人:国立大学法人広島大学
2013年3月14日出願

【論文】
Zu Soh, Shigehisa Kitayama, Akira Hirano and Toshio Tsuji, "Bioassay System Based on Behavioral Analysis and Bioelectric Ventilatory Signals of a Small Fish," IEEE Transactions on Instrumentation and Measurement, Vol. 62, No. 12, pp. 3265-3275, 2013.

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