育児中の企業就業者のキャリア形成支援に関する研究

keywords.jpg職業的アイデンティティ,メンタリング,ワーク・ファミリー・コンフリクト 

児玉 真樹子 

MAKIKO KODAMA

division.jpg教育学研究科 学習科学専攻 学習開発学講座

position.jpg准教授

研究概要

研究の背景

キャリア形成支援を具体的に検討する際、特に危機に直面しやすい時期にある者への有効な支援を明らかにすることは重要な課題と言えよう。
危機に直面しやすい時期の1つに育児期が挙げられる。育児期には、仕事領域と家庭領域の各々からの役割要請がいくつかの点で互いに両立しないときに生じる、役割間葛藤の一形態である「ワーク・ファミリー・コンフリクト」(Greenhaus & Beutell, 1985)を抱きやすい。岡本(2002)によると、このような役割間葛藤はアイデンティティ(Erikson, 1950)にとっての危機となる。児玉・深田(2008)はライフステージ別に被調査者を未婚群、子ども無し群(結婚後子どものいない者)、子育て中群(一番下の子供が6歳以下の者)、子育て後群(一番下の子どもが7歳以上の者)に分けて、職業的アイデンティティの得点を比較した。その結果、同じ年代でも子育て中の場合、職業人として自分なりの目的をもって主体的に生きているという感覚の度合が低くなることが確認された。

研究内容

キャリア形成の指標として、就業継続意思や職業的アイデンティティを扱った。
研究1では、育児中の女性正社員の就業継続意思に及ぼすメンタリングの効果を、職業的アイデンティティおよびワーク・ファミリー・コンフリクトを媒介変数に投入して検討した。この際、メンタリングを職業領域メンタリングと育児領域メンタリングと両立領域メンタリングの3種類で捉えた。
研究2では、育児中の男女正社員を対象に、WFCを介しての職業的アイデンティティおよび親アイデンティティ形成に及ぼすメンタリングの効果を検討した。この際、メンタリングを職業領域メンタリングと育児領域メンタリングの2種類で捉えた。
なお、メンタリングとは、経験豊かなメンターが未熟なプロテジェに対して行う支援であり、職業領域メンタリングとは、一人の職業人としての成長を目的として行われるもの、育児領域メンタリングとは、一人の親としての成長を目的として行われるもの、両立領域メンタリングについては、職業人と親の2つの役割を担う人間としての発達を目的として行われるものと定義している。

成果

研究1については、パス解析を行った結果、社内に職業領域のメンターをもつことが職業的アイデンティティ形成を直接的に促し、社内に両立領域のメンターをもつことが就業継続意思を直接的に促すことが示された。またWFCのうちF→W因子は職業的アイデンティティの確立度合に負の影響を示し、職業的アイデンティティの確立度合は就業継続意思に正の影響を示した。同時に社外に職業領域メンターをもつことがWFCのうちW→Fを増加させる働きもみられた。
研究2については、男女別にパス解析を行った結果、男女いずれも社内に職業領域メンターをもつほど職業的アイデンティティ形成が促進されることが、社外に育児領域メンターをもつほど親アイデンティティ形成が促進されることが示された。また、男女ともにWFCのうちF→W因子から職業的アイデンティティへの形成抑制効果がみられた。一方、男女ともに、メンターをもつほどWFCが増加し、間接的に職業的アイデンティティもしくは親アイデンティティの形成を抑制する働きが、その影響力は小さいながらも見られた。

実用化に向けて(想定業界・用途、課題、企業への期待など)

育児中の企業就業者のキャリア形成に対して,どのようなメンタリングが重要になるかについて確認され,企業内の人材開発への貢献が考えられる。

本研究の特徴・優位性

育児中の男女の企業就業者のキャリア形成支援に、メンタリングが重要となることが明らかになった。特に社内に職業領域メンターを持つことが重要であることが示された。

お問い合わせ