BBF2H7による軟骨細胞増殖促進作用と遺伝子欠損マウス

keywords.jpgBBF2H7, 軟骨細胞, 増殖 

今泉 和則 

KAZUNORI IMAIZUMI

division.jpg医歯薬保健学研究院 基礎生命科学部門 分子細胞情報学

position.jpg教授

研究概要

研究の背景

手や足の骨は、胎児期において骨になる場所に一旦軟骨ができ、あとでその部分を骨に置き換えることで作られていきます。この仕組みは軟骨内骨化と呼ばれ、胎児の発生の段階で精密にコントロールされています。しかし軟骨内骨化が上手く行かない場合には軟骨無形成症になり四肢短縮型低身長などを起こします。軟骨内骨化の仕組みは様々なタンパク質が重要な役割を果たしていることが以前から予想されていましたが、詳細な分子機構は良くわかっていませんでした。一方、軟骨の障害によって起こる病気は、軟骨無形成症以外に大人になってから発症する変形性関節症があります。変形性関節症は筋力低下、加齢、肥満などのきっかけにより膝関節などの関節軟骨の変形、断裂で起きるとされています。大人になった関節軟骨は再生能力が低いため一旦発症してしまうと自力では修復不能で、病状が悪化すれば手術による治療を施すしか手がありません。日本だけでも700万人以上が罹患しているといわれていますが、根本治療法がないため新しい治療薬の開発が待ち望まれています。

研究内容

本研究では軟骨細胞に優勢的に発現する小胞体ストレスセンサーBBF2H7の軟骨形成における働きについて、BBF2H7の遺伝子欠損マウスを作成し、形態学的、生化学的および分子生物学的な解析を通じて詳細に解析しました。

成果

軟骨細胞の中から細胞の外に放出されたタンパク質BBF2H7の一部分に軟骨細胞を増殖させる働きがあることを突き止めました。一方、細胞の外に放出されずに細胞内にとどまる部分には軟骨成分(マトリックス)の産生に不可欠な役割を担っていることもわかりました。この2つの異なった軟骨細胞内での制御機構を同時に作動させることで、BBF2H7は軟骨を成長させ骨に置き換える軟骨内骨化の主役として働くことが解明できました。

実用化に向けて(想定業界・用途、課題、企業への期待など)

BBF2H7は細胞外に放出されて軟骨細胞を増殖させる能力があるため、ダメージを受けた関節軟骨の表面に投与することで関節軟骨を再生できる可能性があります。変形性関節症への治療効果が期待できます。

本研究の特徴・優位性

BBF2H7が軟骨細胞を増殖させ、軟骨形成を促進する効果をはじめて解明した。特許申請中であり優位性がある。また遺伝子欠損マウスについてはすでに特許取得済みである。

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論文;
1.Saito A, Hino S-I, Murakami T, Kanemoto S, Kondo S, Saitoh M, Nishimura R, Yoneda T, Furuichi T, Ikegawa S, Ikawa M, Okabe M, Imaizumi K.: Regulation of endoplasmic reticulum stress response by a BBF2H7-mediated Sec23a pathway is essential for chondrogenesis. Nature Cell Biology, 11: 1197-1204, 2009.
2. Saito A, Kanemoto S, Zhang Y, Asada R, Hino K, Imaizumi K.: Chondrocyte Proliferation Regulated by Secreted Luminal Domain of ER Stress Transducer BBF2H7/CREB3L2. Molecular Cell, 53: 127-139, 2014.

特許;
1発明者:今泉和則, 日野真一郎.
発明名称:軟骨疾患のモデル非ヒト動物.
特許番号:第5240756号
登録日:平成25年4月12日
2.出願者:今泉和則, 齋藤敦.
発明名称:BBF2H7(BBF2 human homologue on chromosome7)部分アミノ酸配列を有するペプチドまたはそれに結合する抗体を含む細胞増殖調節用組成物
出願番号:特願2012-189369
出願日:平成24年8月30日

受賞;第32回日本骨代謝学会学術賞(2014)

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