インスリン受容体基質(IRS)を含むシグナル分子複合体の機能解析

keywords.jpgインスリン,IGF,メタボリックシンドローム,diabetes,がん 

福嶋 俊明 

TOSHIAKI FUKUSHIMA

division.jpg医歯薬保健学研究院 基礎生命科学部門 医化学

position.jpg助教

研究概要

研究の背景

代謝や成長の制御に重要なインスリン/インスリン様成長因子(IGF)の細胞内シグナルは、インスリン/IGF受容体に内蔵されたチロシンキナーゼによるインスリン受容体基質(IRS)のリン酸化を介して伝達される。様々なホルモン、サイトカイン、栄養因子とのシグナルクロストークによってIRSのチロシンリン酸化が抑制されると、インスリン抵抗性が発症し、メタボリックシンドロームの主因となる。一方で、IRSのチロシンリン酸化が異常に増強すると、がんの発症/悪性化の一因となることが知られている。しかし、IRSのチロシンリン酸化の制御機構は未だに十分明らかになっていない。

研究内容

我々は、IRSが多くのタンパク質を含む巨大分子複合体を形成しており、その複合体がインスリン/IGFのシグナル・生理活性の強度を調節していることを見出した。そこで、この複合体を構成するタンパク質を同定し、その機能解析を進めている。

成果

IRSに相互作用するタンパク質の一つとしてユビキチンリガーゼNedd4を同定した。Nedd4は、IRSをモノユビキチン化し、これを介してIRSを受容体近傍に移動させることによってインスリン/IGFシグナルを促進する役割を果たしていることが明らかとなった。さらに、このNedd4を介したシグナル増強機構が、インスリン抵抗性発症時には破綻しており、一方、がん細胞では異常に活性化している可能性が考えられた。その他のIRS結合タンパク質についても、鋭意解析を進めている。

実用化に向けて(想定業界・用途、課題、企業への期待など)

IRSに結合するタンパク質の機能を制御する低分子化合物の探索に関する共同研究を製薬会社に期待する。このような化合物を介してインスリン/IGF活性の強度を調節できれば、メタボリックシンドロームやがんの新しい治療法の開発に貢献できると考えている。

本研究の特徴・優位性

インスリン感受性剤としてチアゾリジン誘導体やビグアナイド剤が処方されているが、その作用機序は不明点が多い。IRS結合タンパク質を標的とする新しい薬剤を開発できれば、IRSを介したインスリン/IGFシグナルを調節するという特異的な作用点を持つ点で、既存の薬剤にはない高い特異性のインスリン/IGF活性制御剤になると期待している。

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Mol Cell Endocrinol. 2011 Sep 15;344(1-2):81-9, Biochem Biophys Res Commun. 2011 Jan 21;404(3):767-73, The best presentation award in Gordon Research Conference: Insulin like growth factors in physiology and disease, Ventura, CA, 2011.2.

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