熱方程式に対する境界値逆問題に対する囲い込み法

keywords.jpg境界値逆問題, 熱方程式,空洞同定,介在物の同定,囲い込み法 

川下 美潮 

MISHIO KAWASHITA

division.jpg理学研究科 数学専攻 数理解析講座

position.jpg教授

共同研究者 : 池畠優氏(広島大学大学院工学研究院・電気電子システム数理部門・数理学研究室)

研究概要

研究の背景

熱方程式に対する境界値逆問題の設定が妥当かどうか、さらに空洞、または介在物の形状についての情報を外側の境界上のみでしか得られない観測データからどの程度再構成できるかについて、数学を用いて理論的に調べるのは重要である。

研究内容

池畠優氏(広島大学大学院工学研究院)は定常問題のときに内部の空洞、または介在物を含む凸集合で最小なもの(凸包という)を求める手順である「囲い込み法」を提唱し、その理論的な正当化を数学を用いて与えた。この研究を受けて、熱方程式により定式化される境界値逆問題についても「囲い込み法」の考え方がどれくらい有効であるかについて数学を用いて理論的に研究することを試みた。
この研究は池畠優氏との共同研究である。

成果

観測データが無限個得られる(実際は有限近似する)とすれば、どういうデータを与えれば空洞や介在物の情報が得られ、特に凸包が求められるかが理論的には明らかになった。一回のみの観測のときは、外側の境界と空洞や介在物との距離が求まること、および空洞のときに限ればより詳しい情報(凸包まではわからない)も得られることが示された。数学を用いた証明から分かることは次の2点である。
1. 観測データを取る際、最初の内部の温度を場所によらず一定にしないといけない。例えば、十分さましてから観測を始める必要がある。
2. 観測を始める瞬間における熱流の変化だけから内部の情報が得られる。逆に、最初、熱流に変化を与えずに内部の情報を得るのは難しい(「逆は必ずしも真ではない」が、証明を見ればこの主張は正しいと思われる)。

実用化に向けて(想定業界・用途、課題、企業への期待など)

まだ、数値解析による検証を行っていないこともあり、実際にどの程度有効なのかを調べるのは今後の課題の一つである。

本研究の特徴・優位性

境界値逆問題に対する理論的な研究では、通常、無限回の観測を行うことを前提に行われている。一方、「囲い込み法」は有限個の観測データからでも再構成の手順を理論的に与えることができ、この点に「囲い込み法」による手法を開発する意義があると考えている。

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Ikehata, M., and Kawashita, M., Inverse Problems 25 (2009) 075005.
Ikehata, M., and Kawashita, M., Inverse Problems 26 (2010) 095004.
URL 池畠優氏のホームページhttp://www.researchgate.net/profile/Masaru_Ikehata 

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