本邦における中鎖アシルCoA脱水素酵素(MCAD)欠損症の変異酵素機能解析

keywords.jpg脂肪酸代謝異常,乳幼児突然死,新生児マス・スクリーニング 

但馬 剛 

GO TAJIMA

division.jpg医歯薬保健学研究院 統合健康科学部門 小児科学研究室

position.jpg助教

研究概要

研究の背景

中鎖アシルCoA脱水素酵素(MCAD)欠損症は、経口カロリー不足時の脂肪酸酸化障害によって、主に乳幼児に急性脳症や突然死をもたらす先天代謝異常で、タンデム質量分析法による新生児マス・スクリーニング(NBS)が全国へ展開中である。これを真の小児保健向上につなげるためには、陽性例の迅速な確定診断と、酵素障害の重症度評価を行える検査体制が必要である。

研究内容

2001年以降、国内各地の NBS 陽性例または発症後精査例について、HPLC を用いて末梢血リンパ球中の MCAD 活性を測定してきた。活性低下例では直接シークェンス法にて遺伝子解析を実施。日本人症例の変異スペクトラムは欧米白人例とは大きく異なっており、真に急性発症のリスクを有する罹患児を NBS で捕捉し、適切な診療を提供するためには、各変異酵素の機能障害を評価することが必要と考えられた。その方法として、変異酵素の過剰発現系を作成し、リンパ球の場合と同じ方法で MCAD 活性を測定した。

成果

リンパ球酵素活性測定によって、これまでに発見された国内症例(30数例)の 2/3 を診断した。新生児スクリーニング陽性例では、遺伝子変異が同定されても残存活性が高い例が少なからずあり、そのような変異酵素の発現系による解析では、野生型酵素の50〜100%レベルの高い活性が観察された。

実用化に向けて(想定業界・用途、課題、企業への期待など)

すでに臨床応用可能な状態である。今後 NBS が長期的に継続されることを考慮すると、酵素活性測定・遺伝子解析は保険診療として行い、その上で変異酵素機能解析を研究として実施していくような体制が望まれる。

本研究の特徴・優位性

我々が実施している HPLC によるリンパ球 MCAD 活性測定法は、従来報告されてきた他の様々な測定法に比べて、方法が簡便な上、正常者と罹患者の鑑別が明瞭で、さらに保因者の多くも鑑別することができる点が大きな特長となっている。
HPLC は汎用分析機器で一般的な検査室の多くが保有していると考えられ、国内各地域の検査拠点で容易に導入可能である。

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Tajima G, Sakura N, et al: J Chromatogr B Analyt Technol Biomed Life Sci 823: 122-130, 2005.
 2009年度 日本先天代謝異常学会 奨励賞

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