瀬戸内海環境に及ぼす黒潮影響の革新的計測

keywords.jpg水中音波,計測,流速,水温,環境,長期変動,瀬戸内海,黒潮 

金子 新 

ARATA KANEKO

division.jpg工学研究院 社会環境空間部門 地球環境工学講座

position.jpg教授

研究概要

研究の背景

瀬戸内海水は、豊後水道あるいは紀伊水道から流出入する黒潮水により太平洋水と交換している。瀬戸内海は閉鎖的内海にしては、海水の汚染が非常に少ないのはこのためである。また、陸棚斜面に沿う黒潮低層水が、底入潮として豊後水道から流入し、瀬戸内海に絶えず栄養分を補給している。このために、活発な漁業が毎年全域て行われている。加えて、瀬戸内海航路に沿って船舶が盛んに通行する瀬戸内海では、広域にわたる長期の海洋環境計測がこれまで不可能であった。このために、瀬戸内海全域に広く薄く拡がり、瀬戸内海環境を支配する黒潮の影響は解明されていない。

研究内容

瀬戸内海中央部に位置する安芸灘の本州側(呉市大崎下島)と四国側に、漁港防波堤を利用して沿岸音響トモグラフィー装置を設置し、水中音波の送受信実験を行う。そして、瀬戸内海全域に広がる黒潮の影響を、流速変動および水温変動として計測することにより、黒潮影響を解明する。

成果

2012年に、安芸灘で得られ流速と水温データの解析から、瀬戸内海を通過する流量は毎秒約1万1千トンであることを発見した。この通過流量は、瀬戸内海の海水を約2.2年で太平洋水と交換する規模である。瀬戸内海の年平均水温は四国沖黒潮の年平均水温より約5℃低く、瀬戸内海の気温より約1℃高いことがわかった。瀬戸内海は、四国沖黒潮から大量の熱量を得て、その熱量の一部を瀬戸内海上の大気を暖めるために使われていることになる。

実用化に向けて(想定業界・用途、課題、企業への期待など)

沿岸音響トモグラフィー技術については、既に特許収得済み。
また、大学の承認のもとに立ち上げた「水環境モニタリング有限責任事業組合」で装置を製作販売している。この革新的水環境計測法を社会に技術移転し、水環境アセスメント分野で広範に利用されるように努めたい。

本研究の特徴・優位性

本手法は、漁業を妨害しないで、沿岸海洋環境の長期・広域計測を可能にする唯一の環境計測技術といえる。

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Acoustical Science and Engineering, 33(1), 45-51, 2012.
Journal of Oceanography, 67, 173-182, doi 10.1007/s 10872-011-0016-5, 2011.
特許第3612434,音響トモグラフィの情報収集装置

2014年3月 日本音響学会第54回佐藤論文賞受賞

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