間質性肺炎におけるKL-6/MUC1の臨床上の有用性

keywords.jpgKL-6, MUC1, 血清バイオマーカー,間質性肺炎 

河野 修興 

NOBUOKI KOHNO

division.jpg医歯薬保健学研究院 応用生命科学部門 分子内科学講座

position.jpg教授

研究概要

研究の背景

間質性肺炎は肺の間質を主座としてびまん性に炎症が広がる病態をいい,しばしば線維化をきたす難治性呼吸器疾患である。血清バイオマーカーの発見と臨床応用は従来の間質性肺炎の診断法を大きく改善すると期待され,これまでに多くの間質性肺炎の血清バイオマーカーが開発されている。それらの中ではII型肺胞上皮の傷害とリモデリングが間質性肺炎の基本病態と考えられているために,II型肺胞上皮由来の血清バイオマーカーは有望であると思われる。私たちの発見・開発したKL-6は、日本では1998年診断薬として承認、1999年には医療保険の適応を得た。また、2012年にはヨーロッパ諸国において診断薬として承認され、世界における認識は高まっている。

研究内容

私たちは血液中に循環抗原として存在する肺癌関連抗原を探求する目的で,肺癌に細胞に対して反応特異性の高い多数のモノクローナル抗体を作製した。その過程で(抗)KL-6抗体と名付けたモノクローナル抗体が検出する循環抗原KL-6が,健常者よりも間質性肺炎患者血清において高率に異常高値を呈することを発見した。KL-6は膜貫通型の非分泌型ムチンであるMUC1ムチンに属する高分子量糖タンパク抗原であり,間質性肺炎患者由来の病変肺組織中に増生したII型上皮細胞では,KL-6が明らかに強く発現している。その後,間質性肺炎の診断マーカーとしての臨床応用に向けて診断用のキットを開発し,1999年に厚生労働省から診断薬として認可され,2000年に保険収載された。KL-6は現在ではわが国で年間約200万検体が測定されるほど臨床の現場に広く普及している。

成果

多くのKL-6に関する研究報告により,血清中のKL-6は(1)間質性肺炎と他疾患との鑑別診断,(2)間質性肺炎の病勢把握,(3)間質性肺炎の治療経過観察に有用であることが明らかにされている。

実用化に向けて(想定業界・用途、課題、企業への期待など)

わが国においてKL-6が臨床応用されてすでに10年が経過しているが,臨床試験で明らかにされてKL-6の臨床上の有用性に関するデーターは非常に限定的であり,欧米人における臨床応用はなされていない。さらに,私たちは薬剤性肺障害や嚢胞性肺線維症などの呼吸器疾患の発症頻度や血清KL-6値に人種的な違いを認めると考えている。血清KL-6値が欧米人においても有用であることを示す国際的な前向き試験を行う必要があると思われる。

本研究の特徴・優位性

血清バイオマーカーは外科的肺生検,高分解能CT,気管支鏡検査,肺機能検査などの検査と比較して迅速,低コスト,非侵襲的な利点を有するために,間質性肺炎患者の診療に非常に有用であると思われる。

detailsubtitle3.jpg

(1) 1996年 特許第2011158号 間質性肺炎診断用試薬
(2) 2011年 科学技術分野における文部科学大臣表彰 科学技術賞 開発部門

お問い合わせ