薬剤性腎障害防御剤としてのプロタミンの応用開発

keywords.jpgポリペプチド,薬剤性腎障害,アミノグリコシド系抗生物質 

永井 純也 

JUNYA NAGAI

division.jpg医歯薬保健学研究院 基礎生命科学部門

position.jpg准教授

研究概要

研究の背景

医療現場で使用されている医薬品の中には、副作用の発症やそうした副作用への懸念のために、投与が控えられるものが少なくない。したがって、副作用のない、より有効かつ安全な医薬品の開発が求められている。

研究内容

ゲンタマイシン等のアミノグリコシド系抗生物質(AG)は、グラム陰性菌感染症の治療に優れた効果を発揮するが、その投与によって発症する腎障害や聴器障害が治療を進めていく上で大きな問題となる。AGによるこれらの副作用は、AGが腎近位尿細管上皮細胞や内耳有毛細胞に特異的に取り込まれることによるものと考えられている。この特異的な取り込みには、エンドサイトーシスレセプターやカルシウムチャネル等が関与していることが示唆されている。
本研究では、食品添加物や医薬品として利用されているポリペプチド、プロタミンによるゲンタマイシンの腎尿細管上皮細胞内取り込みに及ぼす影響について検討した。

成果

培養ヒト腎近位尿細管上皮細胞であるHK-2細胞における[3H]ゲンタマイシンの細胞内取り込みは、プロタミンの共存によって濃度依存的に阻害された(右図)。その50%抑制濃度は5.9 μMであり、これまで当研究室で見い出した他の阻害物質に比べてもプロタミンはより強い阻害効果を有することが認められた。

実用化に向けて(想定業界・用途、課題、企業への期待など)

プロタミンは食品添加物や医薬品として既に用いられており、こうした製品を扱う企業との連携が想定される。本成果の現在の課題としては、in vitro実験ではプロタミンは低濃度で[3H]ゲンタマイシン細胞内取り込み阻害効果を発揮するが、実験動物を用いたin vivo実験では高用量のプロタミンを投与する必要があり、今後はプロタミンの投与量を低減する手法を開発することを考えている。

本研究の特徴・優位性

AGの腎毒性防御に関する研究は、以前から数多くなされているが、それらの研究は、AGが腎に移行した後の細胞毒性発現を抑制しようとするものが多い。当課題における手法は、腎尿細管細胞内への取り込みを抑えるものであるため、腎障害の完全な抑制が期待できる。

detailsubtitle3.jpg

Nagai, J. and Takano, M. (2010) Expert Opin. Drug Metab. Toxicol. 6, 1125-1138

お問い合わせ